【国際看護師の日】ヒュー・スモール著『ナイチンゲール 神話と真実』への反証

【看護の日】ナイチンゲール203回目の生誕記念日に因んで誤認を解く

5月12日はナイチンゲールの203回目の誕生日です。

コロナ禍で中止になっていた英国・ナイチンゲール基金団体主催のセレモニーが、今年はウェストミンスター寺院で開催されるという情報が入ってきました。近かったら是非参列したいところですが、今回の参列はあきらめています。

さて、本日は長きにわたって誤解され、誹謗・中傷の的になっていた「ナイチンゲールの真実」について、研究所が2年以上をかけて研究した結果を発表します。それはヒュー・スモール著『ナイチンゲール  神話と真実』(初版本&新版)(みすず書房)において、スモール氏が述べている見解に対しての反論です。

スモール氏は本著で、クリミア戦争における兵士の死亡率の高さは、病院の清潔と換気というテーマを無視したナイチンゲールの責任であるという論調を繰り広げています。ナイチンゲールは戦後「報告書」をまとめる段階にきてようやくそのことに気づき、しかもそれは自分の不注意による過失であると認め、その罪の意識によって発作を起こし、以来寝込んでしまったという筋書きを描いているのです。さらに彼女は贖罪のためにその後の執筆活動を通して「換気」を強調したり、公衆衛生面への関与を強めたりしたと言っています。これは本当でしょうか? ナイチンゲールを深く知らない人ならば、一読して「へえー、ナイチンゲールってそんな人だったのか」と思い、ナイチンゲールへのイメージをマイナスに変化させるでしょう。

スモール氏は、あたかもそれを裏付ける証拠があるかのように論を展開していますが、証拠となる手紙や私記などを示す文献は明記されていません。ナイチンゲールが存命でないためご本人から実態を聴き取ることもかないません。ないものをあるかのように書かれると、それを論破するためには膨大な資料と向き合わなければなりませんし、そのための時間とエネルギーを必要とします。小南吉彦と私はかなりの時間を使い、あらゆる関連資料を収集し、分析しました。また同時にスモール氏の動向をご存じのカナダの研究者・リン・マクドナルド博士と連絡を取り合いました。そしてスモール氏は大きな誤認をしており、著書に書かれている事柄の多くは事実ではないということを明らかにしました。

本日は「研究報告」という形で「録画」に撮りましたので、是非ご覧になってください。

そしてナイチンゲールがいかに貶められているかを想ってください。ナイチンゲール看護研究所としては、これまでの長年の研究を踏まえて、彼女の無実を訴えるものです。

ナイチンゲールは決して「過失責任者」でもなければ「死の天使」でもありません。罪など犯していないどころか、深い知識と経験知を活かして、19世紀英国を感染症から守る役割を果たした女性です。

 

私の好きな「シャガ」の花です。今が最盛期で山の斜面一面に咲いています。日陰でも咲く、美しい花です。