「KOMIケア理論」の構造と特徴について

「KOMIケア理論」のKOMIとは、Kanai Original Modern Innovation の頭文字をとって命名したもので、“金井一薫による現代ケア論”の意を示しています。さらに筆者の本名 K O M I N A M I のKOMIからとったという由来があります。

1.「看護理論」の存在理由

私は、看護の本質や目的を解き明かし、理論を実践に移す道筋を説いた理(ことわり)を「看護理論」と呼んでいます。

どのような些細な実践にも「看護理論」を内在化させないと、看護行為は、たとえそれが最高度な技術であったとしても、単なる技術となり、実践の目的とその方向性を見失った行為に成りさがってしまいます。

したがって、看護実践の展開には、必ず看護の目的を明らかにした理論の活用が必要なのです。

2.KOMIケア理論の構造

「KOMIケア理論」の構造は、以下の図に示すとおりです。「目的論」「対象論」「方法論」「管理論」「教育論」「いのちのしくみと疾病論」という構成要素で成り立っています。

この構造においては、医学の視点と異なる「ケアの視点でみる“いのちのしくみ”と“疾病論”」が重要な位置をしめています。

このテーマを明確に表出しなければ、看護学の独立はありえません。

そして目的論・対象論・方法論と相互連関する「いのちのしくみ」と「疾病論」を含む全体構造は、「管理論」と「教育論」の内容に大きく影響します。(図1

すべての要素が「看護の視点」で解かれ、要素間の関係性が明確に表示できてはじめて、看護実践を“看護そのもの”導くことができます。

いのちのしくみと疾病論(図1)sp用

KOMIケア理論の特徴は、理論を実践に適用し、実践の形態が限りなく「看護であるもの」として実現できるように導くところにあります。

ナイチンゲールは「理論というものは、実践に支えられているかぎりは有用なものですが、実践のともなわない理論は看護師に破滅をもたらすのです」(1881年)と言っています。

まさに「看護理論」の使命は、実践と結びつき、看護であるものを実現させることにあるのです。

KOMIケア理論を構成する主要概念

KOMIケア理論には、以下に示すように5つの主要概念があります。

これらは、KOMIケア理論の根底に流れるもので、KOMIケア理論は、これらの主要概念によって成り立っています。

 (1) 看護とは何か

看護とは、体内に宿る自然治癒力=生命の回復のシステム=生命の自然性が、体内で発動しやすいように、その人を取り巻く生活の条件・状況を、生命力の消耗を最小にするように、また持てる力を最大に発揮できるように、最良の状態に整えることである。

 (2) 病気とは何か

「すべての病気は、その経過のどの時期をとっても、程度の差こそあれ、 その性質は回復過程であって、必ずしも苦痛をともなうものではないのである。

つまり病気とは、毒されたり(poisoning)衰えたり(decay)する過程を癒そうとする自然の努力の現れであり、それは何週間も何か月も、ときには何年も前から気づかれずに始まっていて、 このように進んできた以前からの、そのときどきの結果として現われたのが病気という現象なのである。」

((F.ナイチンゲール:『看護覚え書』)

 (3) 健康とは何か

「健康とは、良い状態をさすだけでなく、われわれが持てる力を十分に活用できている状態をさす。」      (F.ナイチンゲール:病人の看護と健康を守る看護、1893年)

 (4) 環境とは何か

人間にとって環境とは、人的要素を含めた地球環境全体を意味する。それは地球誕生の歴史をふまえて、生命のあり方の基本を獲得してきた全生物と常に共存関係にあり、相互に影響しあって変化し続けることが特徴である。

 (5) 人間とは何か

人間は、生命の誕生の段階から地球環境の変化に応じて進化してきた生物の一種で、大きな脳を持ち、外部環境の刺激に応じて独自の認識を育み、その認識が人間としての生活を創り上げてきた。人間は常に環境との相互作用を通して、内部環境を一定の状態に保ち、人と人との関係性を通して、社会の中で生命の法則に則って生きる存在である。

尺度やツールの開発

KOMIケア理論は、理論展開を正確に、容易にするために、次のような尺度やツールを開発しています。

 (1)目的論の理念は、「看護の5つのものさし」によって表現されています。

「ものさし」を活用することによって、看護の方向性を見極め、なされた看護の結果を看護の視点で評価できるようになります。

(2)対象論は生活している人間を看護の視点で解いており、①生命過程、②認識過程、③生活過程、④社会過程、⑤自然過程の5領域を構成要素としています。(図1参照)

さらに5領域のそれぞれには12~16の要素分析がなされており、「5過程の全要素」は、病人など看護の対象者のQOL(生命の質と生活の質)を判定するうえで、「評価尺度」として活用することが可能です。(要素一覧表は図2を参照)

(3)「生命過程」の状態を判定するためのツールとして「KOMIレーダーチャート」が、「認識過程」と「生活過程」の状態を判定するためのツールとして「KOMIチャート」が開発されています。

2つのチャートは視覚的に見やすく、一目でその時のその人の状態を判断できるようになっています。またチャートを時系列で表せば、その人の身体面と認識面、および生活行動面の変化を、経時的に読み取ることができます。(各チャートの図柄は図3を参照)

(4)方法論は「看護過程の展開」を通して看護の目的を実現するように組み立てられています。「KOMIレーダーチャート」「KOMIチャート」を「アセスメントツール」として活用し、同時に「5つのものさし」を用いて、「解決すべき生活上&健康上の課題」を見出し、看護の方向性を打ち出していく手順を示しています。

本システム展開のためのIT化も進んでいます。

komi-care-jissen-1komi-care-jissen-2

komi-care-chart-system

 

メルマガ登録

メールマガジンに登録すると次回セミナーの案内等をお送りします。