看護・介護・助産の本質を見つめ直す4冊

近年私が世に送り出してきた書籍の中から、ある一つのテーマでつながる4冊を、あらためてご紹介したいと思います。

看護とは何か。介護とは何か。そして助産とは何か――。発刊の時期はそれぞれ異なりますが、根底に流れているのは同じ問いです。ナイチンゲールが150年以上前に遺した「病気とは回復過程である」という思想を出発点に、人間が本来もっている生命の力とは何か、それを支えるとはどういうことかを、現代の生命科学の視点から読み解きました。

その歩みの記録として、4冊をあらためてご紹介します。

①『ナイチンゲールKOMIケア理論 ―生命科学モデルに基づく看護理論―』

著者:金井 一薫
第1版/2026年5月31日発刊/B5/192頁
定価 3,200円(税別) ISBN:978-4-87474-211-2

宇宙から生命へ。生命から看護へ。看護学の新たな地平を拓く一冊

病気とは何か。看護とは何か。そして、人間とはどのような存在なのか。
私たちは病気になると、その状態を「異常」や「故障」として捉えがちですが、人体は病気や障害の中にあっても、ただ受け身でいるわけではありません。
感染症に対しては免疫が働き、傷は修復され、睡眠中にも体は修復と再生を繰り返しています。
ナイチンゲールは、この人体に備わる働きを見つめ、「病気とは回復過程である」と表現しました。

本書では、この回復過程を「植物性器官」と「動物性器官」の協働によって営まれる生命現象としてとらえ、「看護とは回復過程を支援することである」という立場から看護の役割を解き明かしています。
単なる技術論・経験論としてではなく、生命科学に基づく学問として看護学を体系化した一冊です。

看護職、介護職、教育者、研究者、そして「人はなぜ回復するのか」という問いに関心をもつすべての方へ。
私自身の長年の研究と実践の成果を結実させた、看護理論への挑戦の書です。


②『看護とは何か―連続講義『看護覚え書』を読む』

著者:小南 吉彦 監修:金井 一薫
第1版/2025年6月30日発刊/菊判/320頁
定価 2,800円(税別) ISBN:978-4-87474-207-5

ナイチンゲールの“原点”に立ち返り、看護の本質をもう一度、胸に刻む一冊

本書は、故・小南吉彦が生涯を懸けて行った講義の集大成です。
『看護覚え書』を深く深く読み込んだ著者だからこそ見抜けた、ナイチンゲール看護思想の核心を、驚くほどわかりやすく、そして熱く語りかけます。

特に、「病気とは回復過程である」を解説するその視点は具体的で説得力があり、生理学・心理学・動物学・天体論まで縦横無尽に行き交う知の旅は、読者をナイチンゲールの世界へ一気に引き込みます。
ほかの解説書にはない斬新な視点と、「病人への看護」の真髄がスーッと胸の内に入ってくる――ページをめくるたびに、「看護とは何か」「なぜ私たちは看護をするのか」が腑に落ちていくはずです。

刊行から時間が経ったいまも、看護学生・若手からベテラン看護師まで、多くの方に読み継がれている一冊です。
“原点回帰”と“明日からの実践”を同時に叶えてくれる、そんな一冊として、あらためておすすめしたいと思います。


③『介護とは何か ―いのちのしくみに基づくケア―』

著者:金井 一薫
第1版/2026年7月10日発刊/菊版/216頁
定価 3,400円(税別) ISBN:978-4-87474-211-9

先日刊行したばかりの、私にとって最新刊となる一冊です。
“介護を世の光に!”――その願いを込めて、本書をすべての介護者に贈ります。

介護には、「なぜそうするのか」という理由があります。食事を介助することにも、身体を清潔に保つことにも、声をかけることにも、一つひとつ意味があります。その理由を理解すると、介護は単なる「作業」ではなく、人の人生を支える専門職としてのケアへと変わっていきます。

本書では、生命の誕生から人体のしくみ、病気や老化の意味、そして人間らしく生きるとはどういうことかまでを、介護の視点からやさしく解説しています。私が最も伝えたいのは、介護とは単に生活のお世話をすることではなく、その人が本来もっている生命の力を支える仕事であるということです。「ケアの5つのものさし」や「KOMIチャートシステム」を用いた考え方、さらに「クラウド版KOMIシステム」を活用した記録・共有の方法まで、介護の考え方と実践、そして記録を一体的に学ぶことができる、新しい時代の介護書です。

介護福祉士を目指す方、介護の仕事を始めたばかりの方、長年介護に携わっている方、ご家族を介護している方――すべての方にとって、自信と誇りを育み、「介護という仕事の素晴らしさ」をあらためて実感していただける一冊になることを願っています。


④『ナイチンゲール助産論 ―Introductory Notes on Lying-in Institutions』

著・訳:金井 一薫 訳:島田 将夫
第1版/2024年8月20日発刊/菊判/176頁
定価 2,500円(税別) ISBN:978-4-87474-203-7

刊行から時間が経ちましたが、いまも折に触れて読み返していただきたい一冊です。
ナイチンゲールの膨大な印刷文献の中で、これまでほとんど知られていなかった『産院覚え書・序説』の翻訳書です。

ナイチンゲールは1862年、英国で初めて助産師訓練学校を開設し、助産師を女性の専門職のひとつとして誕生させました。
しかし産科病棟に産褥熱が蔓延し、病棟も学校も閉鎖を余儀なくされてしまいます。
健康な産婦がなぜ産院で死ななければならなかったのか――長年の夢を打ち砕かれたナイチンゲールは、ヨーロッパ中の産院の実態調査に乗り出し、その死亡率が自宅分娩よりも高いという衝撃の事実に向き合いました。

本論文には、理想的な産院構造や設備・管理のあり方、そして助産師教育のあるべき姿への熱い提言が記されています。
そこから読みとれるナイチンゲールの理想の助産師像は、現代の助産師界にとっても新鮮で、消えることのない本質的なものです。
翻訳文の前には、訳者である私・金井一薫による「訳者・論考」を収録し、当時の時代背景や英国の助産事情を解説していますので、ナイチンゲールの意図がよりスッキリと頭に入ってくるはずです。

「助産師とは、科学的かつ実践的な訓練を受けて、必要時には相談・助言を受けながら、正常・異常を問わず、あらゆる分娩事例を、産科医と同様に取り扱うことができる女性のことを指します。
このような訓練は、2年以内に終わらせることはできません。」――フロレンス・ナイチンゲール


以上、4冊をご紹介しました。
刊行の時期はそれぞれ異なりますが、どの本も根底にあるのは「人はなぜ回復するのか」「人を支えるとはどういうことか」という同じ問いです。
ナイチンゲールが遺した思想を出発点に、看護・介護・助産という現場から、その答えを一緒に探っていただければ嬉しく思います。

ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお手に取っていただけますと幸いです。