人種差別主義者として貶められているナイチンゲール

-『Sanitary Statistics of Native Colonial Schools and Hospitals』を読んで真実を見極めよう!-

2月1日(日)
大雪の被害に遭われている地方の皆さまに、心からのお見舞を申し上げます。

さて、またまたナイチンゲールを貶める論文や記事や噂が流れています。
本当に、昨今のナイチンゲールをめぐる評価は、軌道を逸しています。
小説のような創作物語ならば、どのような人物に描こうと構わないのですが、ナイチンゲールには優れた業績があり、特に著作の数々はナイチンゲール思想研究者によって、その真価が解き明かされているのです。
それにもかかわらず、まことに信じられないような角度からナイチンゲールの存在そのものを貶めようとする動きがあちらこちらで起こっています。
ナイチンゲールをracist(人種差別主義者)とする動きもその一つです。
そう決めつけられる対象になったのが、本書『Sanitary Statistics of Native Colonial Schools and Hospitals』です。
カナダのナースで博士課程に学ぶナタリー・ステーク=ドーセが、ナイチンゲールは『The Racist Lady with the Lamp』(ランプを持った人種差別主義者)として論述しており、話題になりました。
昨今の英国をはじめとする海外の看護界では、ナイチンゲールはすでに過去の人であり、白人至上主義の時代に看護を広めた人物なので、その時代の歴史認識が彼女の思想に反映されているという視点で、ナイチンゲールを分析する傾向が目立ちます。
しかしどんなに優れた業績を残した人でも、それぞれの時代の制約は必ずあります。
顕著な科学者たちの業績は、現代では最先端の知見として認められていても、10年もすれば過去の知識となるでしょう。
だからといって、その科学者を貶めることはありません。
ナイチンゲール思想には、時代を超えて継承すべき理念があるのです。
この点を正当に評価することなく、ナイチンゲール思想の時代性をもって現代の世相と比較して批判する考え方は、あまりにも安直で、評価を曲げてしまうと思います。
しかし、本当にナイチンゲールは英国の植民地の人びとを差別し、虐げるような言動をとったのでしょうか?
その真偽は該当する論文を読んで判断するしかありません。
幸い、感染制御専門家でナイチンゲール思想研究者である向野賢治先生が翻訳をしてくださり、Kindle版で公開されています。(800円)

(画像をクリックするとamazon kindle版へジャンプします)

かつてナイチンゲールは、英国人のヒュー・スモールによって「過失を犯した女性」「クリミアで兵士の死亡率が高かったのはナイチンゲールの無知によるものである」などという根も葉もないレッテルを貼られました。
不思議なことに英国では、ナースの誰一人としてこの見解に反対した人はいなかったのです。
日本ではこの論調に賛意を示す人々がいて、拡散したことがあります。
この件については、私の記事をYouTubeで載せていますのでご覧ください。


ナイチンゲールの生涯とその思想を深く研究したならば、決してナイチンゲールに汚名をかぶせることはないはずです。
今回の筋違いの論文の真偽も、ナイチンゲールの原文を読んで判断するしかありません。
図表が多く、読みにくい点もありますが、筋をつかんで、ナイチンゲールの主張に耳を傾けてみてください。
もちろん、当時の時代背景をも踏まえて考察することが必要です。
ここではナイチンゲール独特の手法で植民地の住民の健康問題を取り上げています。
本著から“ナイチンゲールらしさ”がにじみ出ているのがお分かりになると思います。